シャープ株主総会「こんなザマになったのはあなたたちのせいだ!」 株主発言に拍手起こる

【シャープ株主総会(3)】「こんなザマになったのはあなたたちのせいだ!」 株主発言に拍手起こる

シャープの高橋興三社長は続いて議案の決議に入り、各議案の内容を説明。 《議案には、(台湾の)鴻海(ホンハイ)精密工業を引受先として第三者割当増資を実施することのほか、鴻海ナンバー2の戴正呉副総裁のシャープ社長就任をはじめとする計10人の取締役の選任、本社の堺市への移転などが盛り込まれた。いずれも、100年を超える歴史をもつシャープにとって、大きな転換点を意味する議案となった》

 その後、会場での株主からの質疑応答に先立ち、総会前にあらかじめ受け付けた主な質問に、主力取引銀行の三菱東京UFJ銀行出身の橋本仁宏取締役が回答。提携先として、産業革新機構ではなく鴻海に決めた理由については「提携による相乗効果では鴻海がベストと判断した」と説明。

 新たに導入する、優秀な社員に「ストックオプション(株式購入権)」を与える制度については「社員一人ひとりが力を発揮することが大事」と意義を述べた。

 続いて、会場の株主から質問を受け付ける質疑応答に入った。

 男性株主「昔シャープで働いていた者です。従業員を何千人も首にしておきながら、どうして役員は日本電産などに再就職をしているのか。(外資に買収されるというような)こんなザマになったのはあなたたちのせいだよ」

 会場から拍手が起こる。男性株主が続ける。

 男性株主「シャープ社員だったら誰でも知っていると思うんですが、シャープには経営に必要なものとして信用、人材、資本、奉仕、取引先を大事にする『5つの蓄積』というのがあるんですが、これは一体どうなっているんですか」

 疲れた表情ながらも、高橋社長は真摯に株主からの質問に耳を傾けている。役員らがひとつずつ質問に回答していく。

 高橋社長「就職、職業の自由が認められているので、それを止めることができません。ただし、会社で得た知識や技術は転職した先で使わないという制約はある。行くなということはできないので各自の判断になります」

 人員削減により辞めていった従業員に対して、役員ばかりが国内他社の役員などとして再就職していることへの株主の不満に高橋社長は淡々と答えた。代わって、橋本取締役が回答した。

 橋本取締役「人員削減は、出資を受ける受けないかに関わらず、効率化を進めなければいけません。今後もグローバルベースの人員転換をする必要があるが、現時点ではまだ決まっていません」

 さらに高橋社長が続ける。

 高橋社長「『5つの蓄積』というのはもちろん知っています。この3年間、私たちは努力をしてきましたが、決して完璧ではありませんでした。経営のスピードが世の中のスピードについていけなかったことを改めておわびします」

 高橋社長は改めて謝罪の言葉を述べた。

【シャープ株主総会(6)】「信賞必罰は役員から!」返上「賞与じゃない!社外から来た5人の役員報酬や」「鴻海会長1人に負けては…」 株主反発続く

株主からの厳しい質問は続いた。

 男性株主「金融機関出身の取締役に言います。日本電産(社長)の永守(重信)さんやキーエンスの創業者のような国内の他社から優秀な人を(シャープの経営者として)早くから連れてきていたら、シャープはこんなふうにならなかったはずだ。金融機関などの社外から来た5人の取締役は役員報酬を返して、シャープ社員の師弟の育英資金に充てるべきだ」

 役員としての役割を果たしていないとする不満に対し、高橋興三社長が回答した。

 「役員報酬については、賞与は平成24年以来ゼロです」

 しかし、男性株主は「賞与じゃない。役員報酬のことを言っているんだ。社外から来た5人の役員報酬のことや」と納得のいかない様子。

 さらに男性株主が追及した。

 男性株主「隗(かい)より始めなければいけないんだよ。鴻海(ホンハイ)の郭台銘会長が昨日の株主総会で(社員に)信賞必罰の制度を導入すると言っていたが、役員がまず信賞必罰をすべきだ。従業員より役員が先だ。これは常識だ。シャープが一番大損したのは人材をなくしたことだ」

 別の男性株主は「会場に入ったとき、前列に取締役の人が並んでいたのですが、いままさに闘っている人には見えない。まだなぜ私が株を持っているのか。シャープを信じているからです。もっとプライドを持ちましょうよ。鴻海の会長一人なんかには負けてはいけない。シャープブランドを守りましょうよ」と呼びかけた。

これに、野村勝明副社長は「この総会で承認いただければ、鴻海から過半の出資を受けるが、当然シャープの名前は残る。シャープはいつまでもシャープで頑張りたい」と答え、会場から拍手が起きた。

 シャープのテレビコマーシャル(CM)についても質問が出た。

 男性株主「シャープのCMで吉永小百合さんを使っているが、日本一の女優でギャラも日本一と聞いている。なぜ今も使い続けるのか。町田(勝彦・元社長)さんが熱烈なファンと聞いているが、いまも影響があるのか。いまのシャープと吉永小百合さんは合わないと思う。パナソニックのCMは生き生きして買いたくなる。一方で、シャープのCMは重くて買う気にならない」

 これに対し、高橋社長は「吉永小百合さんのCMについては、(町田)元社長の影響はない。吉永さんは私たちより上の年代で絶大な人気がある。深くシャープのことも理解していただいてます」

【シャープ株主総会(8)完】液晶売却条項「出資完了へ全力」に「早く!全額や」疑念続出…質問打ち切られ最長3時間23分終了

株主からは、シャープが鴻海と交わした契約のうち重要な部分について鋭い質問が浴びせられた。シャープ側に何らかの問題が発生して出資が実現しなかった場合、鴻海は液晶や次世代型の有機ELなどのディスプレー事業を「公正な価格で購入できる」との条項だ。

 ある男性株主は「すでに水面下で銀行、鴻海、シャープで(売却の話が)できているのでは」と質問。高橋興三社長が「それはございません」と否定すると、「この総会で承認すると、株主の了解を得ているから売却してもいいということになる。話がないなら(条項を)削除してください」と詰め寄った。

 橋本仁宏取締役が「シャープにとって一番重要なのは出資を完了させること。全力で真(しん)摯(し)に協議している。売却条項は出資が完了しない場合」と説明したが、男性は「シャープが飲めない条件を押し付けられれば出資が止まる。(売却に向けた)話はかなり進んでいるのでは」と納得しない。

 経営陣の表情がこわばり、橋本取締役は「そういう事態は進んでおりません。出資完了に向けて全力で対応しています」と強い口調で再び否定した。

会場からは、ほかの株主からも「早く、全額や!」などと声が上がる。高橋社長も「全額出資ということでやっている。独占禁止法の審査があと1カ国というところまで進んでおり、(全額出資まで)そう時間はかからない」と説明した。

 質問した男性は「もしこの条項通りになったら、どう釈明するのか」となおも引き下がらない。

 高橋社長は「この条項は、シャープが(提携を)やめたいときのほか、巨大災害で工場がつぶれるなど、不可抗力で契約を履行できないとき。そういう事態は全然想定していない。6月中の全額出資はぎりぎりで、いけるかいけないかの世界だが、その方向で進んでいるのは間違いない」と述べた。

 別の男性株主からも「シャープの今年度第1四半期(1Q)の業績を理由に、鴻海が出資を止めるといってくるのではないか。どの程度黒字になっているのか、めどを力強く述べてください」と不安の声が上がった。

 高橋社長は「1Qが理由で出資されないことは、今私自身はそのような感覚は持っていない。経営状況については鴻海ときちんとシェアしている。出資が完了しないと、シナジーを生む取り組みができない」と答えた。

 質問は打ち切られ、最後に6議案の採決に移った。いずれも原案通りに可決。総会は過去最長だった昨年と同じ3時間23分で終了した。

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