知事を辞めれば「幕引き」?とんでもない! 解明しなければ、また同じ問題が起きる

知事を辞めれば「幕引き」?とんでもない! 解明しなければ、また同じ問題が起きる

6月21日に都知事を辞職した舛添要一氏の「政治とカネ」を巡る問題。数日前までの過熱報道がウソのように思えるほど、一気に報道が減ってしまった。しかし、疑惑はまったく解明されていない。ここできちんと総括しなければ、「政治とカネの問題」は、また繰り返されることになるだろう。

 報道が減った今、舛添不信任を全会一致で可決しようとしていた都議会は何をやっているのか。各会派の姿勢について詳細をみていく。

 20日に最後の登庁をすませた舛添氏は、各会派への挨拶や都職員からの花束贈呈など退庁のセレモニーもなく、わずか8名の都職員に見送られて都庁を後にした。

 その在職期間は2年4か月。歴代8人の知事の中で猪瀬直樹前知事に次いで2番目に短い。都議会では知事として9月まで延命してもらう代わりに「給与の全額返上」を訴えた舛添氏だったが、1カ月以内にボーナスと退職金の2600万円を受け取ることが決まっている。選挙区内での寄付を禁止する公職選挙法の関係で、返納は不可能だ。そんな“後ろめたさ”があったのか、あるいは無事に報酬をもらえる嬉しさをぐっと噛みしめていたのか。舛添氏は辞意を表明して以来、公的には一言も発していない。

 6月1日に始まった第2回東京都議会定例会は、まさに混乱を極めたまま閉会した。開会時にはほとんど誰も、知事が辞職することになるとは思わなかっただろう。

 しかも、これほどの大混乱があったにも拘わらず、舛添氏の「政治とカネ」の問題は、何も解明されていない。

 13日の集中審議で舛添氏が提出を約束した「ホテル三日月」の明細書の再発行、および政治資金で購入したと見られる絵画のリストや所蔵品の視察など、いまだ行われていないままなのだ。

 これらについて代表質問や一般質問、さらには集中審議で舛添氏を追及した都議会はどう思っているのだろうか。舛添氏の知事辞職が確定した21日に、各会派に聞いてみた。

 まずは最大会派である東京都議会自民党(127議席中56議席)。13日の集中審議で同会派の鈴木隆道都議は、ホテル三日月の明細書の再発行を求めていた。これについて同会派事務局は以下のように答える。「すでに知事が辞職しているので、道義的責任しか問えない。道義的責任をとるには、お金を返すか辞職するかの手段があるが、究極の責任の取り方は自ら辞めることだ。舛添氏が辞職したので、それ以上追及することは意味がない」。

 要するに、知事の辞職により終わらせるということだ。

 これに対し、これからも追及を止めないと宣言するのは野党最大会派である日本共産党東京都議会議員団(17議席)。同会派の清水ひで子幹事長は「20日の集中審議、そして百条委員会の設置を要求したが、応じられなかった」と議会少数派ゆえの悔しさをにじませた。

 「しかし44項目にわたる舛添前知事に関する資料を開示してくれるよう、事務局に毎日伝えている。それを分析して9月の定例会で再度追及したいと思っている。百条委員会の設置要求も、もちろん行うつもりだ」

 共産党都議団は21日、安藤立美副知事に対して「舛添知事の公私混同の責任を明確化し、再発を許さないための申し入れ」を提出。「舛添知事の公用車運用の実態解明と責任の明確化」、「公務から逸脱した公用車運用の再発防止のためのルールの検討」、「N響コンサートやプロ野球観戦チケットの送り主の特定」、「特別秘書の勤務と公用車運用の実態解明」、「海外出張が高額となった原因分析と責任の明確化」、「都選管として政治資金規正法にもとづく厳格な運用」の6項目について調査・検討を求めている。

 「すでに都議会は閉じられてしまったし、百条委員会設置案も否決された。舛添氏に『議会と約束したことを守れ』と言っても、辞職した以上は難しいかもしれない」。こう述べるのは、東京・生活者ネットワーク(3議席)の事務局。「しかし我々は諦めない。共産党がこれからも追及していくと言っているので、一緒にやっていきたい」。

 舛添問題について都議会民進党(旧民主、14議席)と合同調査チームを立ち上げた民進党都議団(旧維新、4議席)の野上ゆきえ幹事長は、「舛添氏が知事を辞職した以上、状況が変わった。仕切り直しをしなければいけない」と主張する。「すでに私人になった舛添氏をどうやって都議会に呼ぶのかなど不明な点があるが、なんらかの方法で説明を求めていきたい。そのためには議会の中で多数を占める自公の合意が必要だ」。

 かがやけTOKYO(3議席)の上田令子幹事長も、「自公がやると言えば調査はできる」と述べる。「これは舛添知事の置き土産。これを機に、高額な外遊費の他25000ある事務事業をしっかり調べ、都民益を損なうことがなかったかどうかを明らかにしたい」。

 このように舛添問題をこのまま終わらせようとする自民党に対し、野党はみな追及に前向きのようだ。

 では自民党と与党を組む都議会公明党(23議席)はどうなのか。公明党は13日の集中審議で、松葉多美子都議が舛添氏に絵画のリストの開示と所蔵状況の視察を求めていた。これについて斉藤泰宏都議は「我々はこの件について会派内ですでに調査チームを立ち上げ済み。引き続き調査していくつもりだ」と説明する。

 27日に開催される総会では、舛添問題についても謀る予定だという。「我々はこれで終わりだとは思っていない。9月に開かれる第3回定例会では、総務委員会委員長からも資料を出すように要求する。これで幕引きなんて、とんでもない」。

 東京維新の会(1議席)の柳ヶ瀬裕文都議は現在の状況を、舛添氏が金銭疑惑の調査を依頼した「第三者」の弁護士の言葉をもじって「違法ではないが不適切なレベルで終わっている」と批判する。「そもそも私が5月13日に知事に辞職勧告を出した時、誰もこの問題を深刻に考えず、冷たい眼で見ていた。この問題が盛り上がったから追及するというのではなく、舛添問題を機にどう都政を変えていくのかを考えなくてはいけない」。

 だがすでに次期都知事候補を巡り、官邸も巻き込んで動き出している。22日からは参院選も始まるため、人々の関心は薄れていくかもしれない。しかしこれらに紛れて、舛添問題を風化させてはいけない。ここできちんと総括しなければ、「政治とカネの問題」はまた起こりうる。東京都議会の自浄力に期待したい。

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