攻殻機動隊、ポケモン、ナルトーー日本漫画、ハリウッド実写化のいま

攻殻機動隊、ポケモン、ナルトーー日本漫画、ハリウッド実写化のいま

ハリウッドでは現在、日本の漫画を原作とした作品が次々と実写化されている。その中でも賛否両論を巻き起こしているのが、『ゴースト・イン・ザ・シェル』(原作は『攻殻機動隊』)。大手のパラマウント・ピクチャーズが先日、女性型サイボーグ・草薙素子に扮した人気女優スカーレット・ヨハンソンのイメージを公開したことから、アメリカで「ホワイトウォッシュ」(※有色人種の役を白人に演じさせ、白人化してしまうこと、参考:1)反対の署名運動が起こり、物議を醸し出したのも記憶に新しいところだ。

 ほかにも、岸本斉史の『NARUTO -ナルト-』やアニメ原作の『TIGER&BUNNY』など、続々と人気作の実写化が報じられたが、現在交渉中の作品では『ポケットモンスター』の実写版の映画権を廻って、ワーナー・ブラザーズやソニー、レジェンダリーが名乗りを上げ(参考:2)、ニュー・ライン・シネマは、なんと日本漫画界の巨匠・手塚治虫の『鉄腕アトム』の実写映画化を検討(参考:3)しているという。

 ハリウッドの漫画実写化の歴史は案外古く、少なくとも90年代まで遡ることができる。そのひとつが高屋良樹による漫画『強殖装甲ガイバー』の映画版『ガイバー』(1991)であり、4年後には『Fist of the North Star 北斗の拳』、日本のゲームを原作とした『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』(1993)や『ストリートファイター』(1994)などが矢継ぎ早に作られた。

 それから四半世紀が経った今、なぜ、ハリウッドで漫画原作の作品が持てはやされているのだろうか。

 第一にまず、漫画特有の年齢や性別を越えた物語の多様性とストーリー自体の面白さが挙げられる。日本国内ではたくさんの作品がアニメ化されていったにもかかわらず、読者が持つ原作へのイメージを尊重してか、数多くの漫画が手付かずとなっていた。そんな足踏み状態のところに、ハリウッドの映画人が目をつけ、映画化の権利を持っていってしまったという背景もあるようだ。ちなみに『寄生獣』の映画化権は2005年にニュー・ライン・シネマが獲得したが、2013年に契約が失効し、その後、東宝が実写化の権利を得たという珍しい事例である。(参考:4)それに加え、欧州ではすでに日本のアニメが吹き替え版で放送されている国もあり、もしアメリカで興行的に失敗したとしても、世界の市場で挽回することができる。

 そして、第二にして最大の理由は、日本市場も狙えるという点につきよう。漫画原作には、最初から熱烈なファンがついていて、話題にもなりやすい。またアメリカと日本でヒットを飛ばすことができれば、興行成績も期待できるというもの。

 とはいえ、面白そうなコンテンツを先物買いすることの多い映画業界。『アキラ』や『MONSTER』のように、権利交渉が長期化し、途中でストップしてしまうことも少なくない。映画化が実現したとしても、原作を無視した大幅なストーリー改変や、人気俳優を起用した「原作とのイメージのギャップ」によって、原作ファンがそっぽを向いてしまっては本末転倒である。2009年に実写化された『ドラゴンボール・エボリューション』に至っては、脚本家が原作ファンに向かって謝罪の言葉を述べるという異例の事態が発生した。(参考:5) 

 今後、ハリウッドでは漫画実写化のトレンドは暫らく続くであろうが、その量に比例するように、手厳しい評価の下る作品も増えていくだろう。そもそもハリウッドでの実写化には多くの制約はつきものだろうし、何十巻もある漫画を2時間の尺にまとめるのは至難の技でもある。しかし、究極のところ、我々が実写化に求めているのは、あくまで「原作と変わらないキャラクター設定」ではなく、映画として、作品として成立しているかどうか、面白くなっているかどうか、だけなのである。いかにキャラクターが変貌していようが、ストーリーが簡略化されていようが、面白くなっていれば、それで万事オーケーなのだ。

日本で実現できなかった漫画が、海を渡って、ハリウッドでどんな風に料理され、生まれ変わるのか、その成果を楽しみにしている人々は世の中に少なからず存在する。「漫画の実写化は面白くない」という不名誉なジンクスを覆す作品が近い将来、ハリウッドから出てくるのかどうか、今後の進展に期待したい。

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