蹉跌再び 都知事の資質、一転破局に「話が違う…」「何が悪い」舛添氏

【蹉跌再び 都知事の資質(上)】「9月まで知事」は自民との密約だった! 一転破局に「話が違う…」舛添氏は必死の電話

「話が違う」-。舛添要一知事は自民党から辞職を求められた14日夜、同党の国会議員らに電話をかけ続けた。不信任決議案可決の流れは想定外だったのだろう。「9月まで知事を続けるということで、都議会自民党の、しかるべき幹部とは話がついていた」。そう主張する舛添氏の声には、切迫感があったという。

 舛添氏はこの日の夜、土壇場からの巻き返しに奔走した。午後10時12分には黒塗りの公用車に乗り込み、いったんは退庁したものの、そのわずか数分後に庁舎に引き返し、険しい表情で庁舎内に消えた。その間、辞職を求める川井重勇議長(自民)と面談し、約40分後に再び車に乗り込んだ際には伏し目がちだった。

 この面談こそが、舛添氏が辞職に向け、腹を固めた瞬間だったとされる。

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 世論調査で9割を超す批判を集めながら、都議会開会前の舛添氏は強気だった。「都民の代表である都議会には納得してもらえる説明をする」。そのよりどころとなったのは、都知事選で自らを推した最大会派の自民との“密約”だったに違いない。「知事とは都政の混乱を避けるため、しばらく続投させることで合意し、公明も納得していた」と自民都議の一人は明かす。

「参院選前に騒ぎが大きくなりすぎるのは避けたい」とする党本部の思惑も重なり、都議会では辞職は求めず、説明責任を追及するスタンスをとることで話がついていたという。

 潮目が変わったのは、13日の集中審議だった。「政治の機微」などと語り、疑惑の核心についての証言を拒み続ける舛添氏に対し、与党だったはずの公明党が、「知事に五輪を語る資格はない。知事は辞職すべきです」と三くだり半を突きつけ、不信任決議案提出の構えをみせたことだった。

 「自民、しっかりしろ!」。この瞬間、傍聴席から飛んだやじは自民都議に向けられた。「このままではもたない」。14日朝、自民都連幹部は都内のホテルで対応を協議し、「かばいきれない」との認識で一致した。同日午後2時半ごろ、自民は不信任決議案提出を表明した。

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 「家族の人権もずたずた」「自分は1カ月前にも辞めたいと思ったし、今でも辞めたいが、都政の混乱は避けたい」

 同日午後5時45分すぎ、舛添氏は自らの直訴で得た議会運営委員会理事会での発言の場で涙ぐんだ。その言動に野党議員らは興ざめした様子で見守ったが、公明の都議は「ハシゴを外され、恨み節でも言いたかったのだろう」。

舛添氏が退庁し、日付が変わった15日未明、主要会派が共同で不信任決議案を議会運営委員会に提出した。議運委員長として記者会見を開いた自民党の宇田川聡史幹事長は、「自民党案に各派が同調したということでいいのか」と問われ、「結構です」と自民主導を強調した。

 そのころ、舛添氏は辞意を固めていたとされる。自民関係者によると、「本会議で発言する時間を与えてくれるなら辞職してもいい」と自民側に打診し、自民もそれをのんだ。自民都議が恐れた「都議会解散」は水面下で回避されていた。自民都議の1人は満足げに攻防を振り返った。

 「最後はシナリオ通りだ」

蹉跌再び 都知事の資質(中)】「何が悪い」舛添氏、注進聞き入れず 暴走した「大統領」

「別荘の公用車。片道だったでしょう。あれが職員としての、せめてもの抵抗です」

 東京都の舛添要一知事を支え続けてきた都幹部は、公用車での別荘通いについて、再三にわたり、舛添氏に“注進”してきた実態を吐露する。「都民に誤解を与えるような使い方はまずい、と。ただ、『自分の車を使って何が悪い』と聞き入れなかった」

 舛添氏は4月22日までの1年間に計49回、神奈川県湯河原町の別荘まで公用車で移動し、「公私混同」と批判を集めた。金曜の午後2、3時台に都庁を出発するケースが多く、週末は別荘で過ごす。都のルール的には公務後の「帰宅」扱いで、舛添氏は「(別荘からの)帰り道は事務所の車を使っている」などと弁明。「ルール通りで問題ない」と主張した。

 都幹部は「舛添氏は人事権も握っている。それ以上は、強く言えなかった」と悔やみ、「あと1年も発覚しなければ、往復になっていたでしょうね」と語った。

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 こうした実態は、舛添氏が4月28日の会見で語った「(幹部からやめるよう助言を受けたことは)ありません」との説明と食い違う。

 「暴走する地方自治」などの著書がある新潟大の田村秀教授(行政学)は「部下とコミュニケーションできないリーダーは失格だ」という。

 都知事が任命権を持つ知事部局の職員は2万4192人。自らの政策を実現する“手足”に使えるほか、都ではブレーン(頭脳)となる副知事は4人、対外交渉などを代行する特別秘書は2人まで置ける。

 だが、舛添氏は、外部人材を登用した石原慎太郎元知事や猪瀬直樹前知事らと違い、ファミリー企業の元社員ら事務所関係者2人を特別秘書に任命。「自分の意見に反論しない『イエスマン』で周囲を固め、裸の王様になってしまった」(都幹部)

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 都知事の権力は絶大だ。1350万都民や企業が生み出す「都内総生産」は約93兆1千億円(平成25年度)で、オランダ(約83兆3千億円)の国内総生産より多い。予算規模はノルウェーやインドネシアの国家予算に匹敵する約13兆6500億円(28年度)。「都知事は『東京国』の大統領といっても過言ではない」と田村氏はいう。

 都知事は米大統領と同様、有権者の投票で選ばれる。政権与党の代表が就任する首相とは違い、「党内のしがらみもなく、資質によっては、『独裁』状態にもなりかねない」(田村氏)。

 “暴走”を止めるのは都議会の責務だが、今回は辞職に追い込み、疑惑の解明には至っていない。

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