「こち亀ってほんま凄いよな」「秋本治はタイムトラベラーだな」1982年に両さんが予言したことが現実に!!
1976年から『週刊少年ジャンプ』(以下、『ジャンプ』)で連載を開始し、今年で40周年を迎えた“こち亀”こと『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(共に集英社)。1982年に、同作の主人公・両津勘吉が語った夢が、「現実がギャグ漫画の世界と同じになってる…」「こち亀ってほんま凄いよな」「秋本治の先見性はガチ」と、今になって話題を集めている。
今回話題となっているのは、1982年に発売された『ジャンプ』に掲載された「アンコール雪之城の巻」で飛び出した発言(コミックス28巻収録)。どのようなエピソードかというと、ボーナスの60万円で購入したテーブル型の業務用ゲーム機に興じる両さんは、「わしはTVゲームのプロになるんだ!」とイケメン金持ち警官の中川圭一に強く宣言。中川はあきれ顔で「プロ…になってどうするんですか?」と困り顔で聞き返す。そうすると両さんは、「21世紀はすべてがコンピューターだ」「だから先を読んでTVゲームのプロになる」と発言、中川もあきれるのであった……といった内容だ。
もちろん現在は認知されているプロゲーマーだが、任天堂が「ファミリーコンピュータ」を発売したのは1983年、“ゲーマー”として最も早い段階に有名となった高橋名人も、“名人”と名乗り始めたのが85年ということを考えると、こち亀の先見性がいかに高いかわかる。
これにはネット民も「これ割とマジで凄いよな。やっぱ昔のこち亀って神だわ」「秋本はタイムトラベラーだな」「今週のこち亀も面白かったし、このレベルの話を毎週考えるってすげーな。ほんと感心する」という声が続出。
これまでにもこち亀では、80年の『ジャンプ』に掲載された「発明の日!の巻」(コミックス19巻収録)に、現在の「ルンバ」を連想させられる“自動掃除機”が出てきたり、96年に掲載された「ゲーム営業 両津!!の巻」(コミックス100巻収録)では“ゲーム内広告”が出てきたりと、なにかと現代に起こっていることを予言してきたのだ。
さらに、96年掲載の「電脳ラブストーリーの巻」(コミックス98巻収録)では、バイクに乗ると性格が変わる男・本田速人が恋愛ゲームを購入し、とある一人の女性キャラにメロメロになり、ゲーム内でなぜかキャッシュカードのナンバーを聞かれて5万円の服をゲーム内で購入するというエピソードがある。そして、97年掲載の「超美少女SLG(シミュレーションゲーム)!!の巻」(コミックス105巻収録)では、柔道の達人・左近寺竜之介が「どきメモ」という育成ゲームをプレイし、お金を入れないと連続してプレイできなくなってしまうため、課金を繰り返すといった描写もある。このシーンに対しては、「完全にソシャゲだこれ」「ガチャソシャゲ予言してたな」「今のソシャゲ地獄の未来を予感してたんだな」といった声も上がっている。
「そりゃ何年も描きつづけてりゃ、後々的中するセリフになることもあるだろうよ」といった声があるが、現代のようにネットもない時代に、さまざまなジャンルやテーマを取り上げ、最先端の情報を集めていた“こち亀”に「マジで読むべき漫画だわ、昔の流行とか知れるし」との声も上がっている。現在199巻まで発売されているこち亀。すべて読み返してみれば、未来のビジネスに繋がるヒントが隠されているかもしれない。
『ゴルゴ13』や『こち亀』など…なぜ長寿マンガは「サザエさん時空」に陥るのか?
“長生きのコツを調べる”をテーマにしたバラエティ番組『キスマイハンドレッド』(TBS系)の2月8日放送分で、「サザエさん時空」が取り上げられた。「サザエさん時空」とは、長期の連載期間にわたって、主人公をはじめ登場キャラクターの年齢が変わらないことを指す言葉。この名称はマンガ・アニメの『サザエさん』から取られている。
「サザエさん時空」については2つのパターンがあり、ひとつは『ゴルゴ13』(リイド社)や『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(集英社)といった、時事ネタを扱うなど、作品中に時代の変化が見られるもの。一方のパターンとしては、『ドラえもん』や『コボちゃん』(芳文社)など、作品内で時代の変化がほとんどみられないものがある。
番組では、長寿マンガに共通の傾向として、この「サザエさん時空」を挙げる。連載47年の『ゴルゴ13』、連載39年を数える『こちら葛飾区亀有公園前派出所』、連載36年をもって先日終了を迎えた『あさりちゃん』(小学館)、『コボちゃん』に『クレヨンしんちゃん』(双葉社)など……。「サザエさん時空」を取り入れた長寿マンガは、枚挙に暇がない。
また、連載59年にも及ぶマンガ『仙人部落』(徳間書店)を筆頭とした「マンガの長期連載10作品ランキング」(番組調べ)トップ10のうち8作品が「サザエさん時空」を導入しているとのことだった。
このほかにも、「私たちはサザエさん方式で歳をとってるから」といった自虐風(?)ギャグが飛び出したこともある『銀魂』や、『金田一少年の事件簿』(講談社)、『名探偵コナン』(小学館)なども「サザエさん時空」の作品として知られている。
それでは、なぜ長寿マンガは「サザエさん時空」に陥るのだろうか?
ひとつには、マンガ家側の都合があるようだ。番組に出演した『あさりちゃん』の作者・室山まゆみは、作品に「サザエさん時空」を導入することで、「話が作りやすくなる」と語る。というのも、時間経過によって登場するキャラが変化しないため、話のテーマを決めてしまえば、既存のキャラを使った物語が展開しやすいそう。『あさりちゃん』の場合でも、話のテーマに季節ネタが多用されていて、コミックス全100巻中、初詣が5回、バレンタインデーが9回、ひな祭りが3回登場している(番組調べ)。また、キャラが出来上がっているため、作者以外の人が描いても作品は成立すると室山は語る。これは『ドラえもん』や『名探偵コナン』など、別のマンガ家が学年誌などで連載する事例を想像すると理解しやすいだろう。
ちなみに、時として「サザエさん時空」が“破壊”されることもある。『クレヨンしんちゃん』にしんのすけの妹・ひまわりが生まれたり、『コボちゃん』にコボちゃんの妹・実穂が誕生したり……。物語のマンネリ化を防ぐため、一度止まった時空を破壊して新たな展開を生み出してから、やはり「サザエさん時空」に戻っていくようだ。再び「サザエさん時空」に戻っていくあたり、やはりマンガ家にとって「サザエさん時空」は使い勝手が良いものなのかもしれない。
一方で、読者にとっても「サザエさん時空」の作品が受け入れやすいという事情もあるようだ。番組では、日本大学芸術学科の清水正教授がVTRで登場。いわく、日本人には未体験のものを受け入れず、現状は現状のままでいたいとする心理作用「現状維持のバイアス」があり、「変化を求めない」のではないか、としていた。
マンガ家、読者の共犯関係によって呼び起こされる「サザエさん時空」。そんなところに目をつけて作品を鑑賞してみても、面白いかもしれない。