「疑惑の総合商店と言わざるを得ない」 都議の指摘に「説明責任果たせていない」と認める
《政治資金や公用車などの「公私混同」疑惑が指摘されている東京都の舛添要一知事を追及する都議会の一般質問が8日午後1時、始まった。弁護士による「第三者」の調査結果で計440万円の不適切な支出を指摘され、「けじめ」として公用車で通っていた神奈川県湯河原町の別荘の売却などを表明した舛添氏。7日の代表質問では都議4人から「納得できない」などと厳しい質問が相次いだが、8日は全会派から15人が次々と質問する予定になっている。どのような追及が行われ、舛添氏はどう答えるのか》
《1人目に質問する自民党の来代(きたしろ)勝彦都議が登壇する。議場は静まりかえり、質問に注目が集まっている》
来代氏「昨日の代表質問では都議会自民党として前代未聞の再質問を行う事態になりました。知事、このことを重く受け止めてください。先日、広島を訪れたオバマ米大統領の演説は感動的でした。言葉には力があります。言霊があります。知事の答弁は同じ場所に立つ者として、選挙で応援した者の1人として、『情けない』の一言につきます。説明責任を果たしたとは言い難く、せこい言い訳ばかりで恥ずかしい限り。かつて『疑惑の総合商社』といわれた議員がおりました。今の知事は『疑惑の総合商店』と言わざるを得ない」
来代氏「開会日の所信表明では裏切られた思いであります。知事は罪悪感を感じておられるのでしょうか。火に油を注ぐ結果となりました。私は日頃から戦後教育の中で生まれた自分さえ良ければという利己的な考えを批判して参りました。本来、われわれ日本人は勤勉で礼儀正しい民族であります。然るに知事の言動は、私が憂えてきた日本人の悪しき姿そのものです。とりわけこの国の未来を担う子供たちへの影響は計り知れないものがあります」
来代氏「知事は就任時、『万民の上に位する者、己を慎み、品行を正くし、驕奢を戒め、節倹を勉め、職事に勤労して人民の標準となり、下民その勤労を気の毒に思ふ様ならでは、政令は行はれ難し』との西郷隆盛の遺訓をどのような思いで述べられたのでしょうか。理解できません。然るべき時に身を切る覚悟が必要です。知事は道義的責任についてどのように考えているのか伺いたい」
《川井重勇議長が舛添氏を指名する。登壇した舛添氏は一礼して答弁を始めた》
舛添氏「道義的責任についてご質問がありました。己を慎み、品行を正しくした上で丁寧な説明を尽くしていきたいと思います。厳しいご批判を頂きましたが、説明責任を果たせていないということだと思います。自らの言葉で説明できない政治家は身を切るべきというご指摘だと受け止めています。強く自らを戒め、厳しく行動していきたいと思います」
《舛添氏は深々と一礼して答弁台から降りた。この後、14人分の追及が待っている》
美術館39回視察「個人的趣味」との批判に、舛添氏「バランス欠いた」
《政治資金や公用車などの「公私混同」疑惑が指摘されている東京都の舛添要一知事を追及する都議会の一般質問。5人目に質問する野党第一党、共産党の大島芳江(よしえ)都議が登壇した》
《大島氏がまず取り上げたのは平成25、26年、千葉県木更津市のホテルでの家族との宿泊費を『会議費』として政治資金収支報告書に記載した問題だ》
大島氏「7日の代表質問に対する知事の答弁には都民の誰もが納得せず、知事が事実を明らかにし、潔く辞職することを求めています。千葉県のホテル宿泊費について知事は『事務所関係者らとの会議』と説明してきたのに、(第三者の調査)報告書では『出版社社長に相談した面談』とされています。この矛盾について知事は代表質問で『広範な趣旨で事務所関係者と述べた』『具体的には会議という表現で良かった』と答弁しました。知事、いい加減、見苦しい言い訳はやめてください。改めて伺いますが、知事はこの家族旅行の費用を会議費と記載したことは適切だったと今でも認識しているのですか。これが虚偽記載でないと言うのなら、社長なる人物が実在し、客室で面談した証拠を示すべきです。ホテルの領収書の写しをわが党も調べました」
《ここで大島氏は、2枚の領収書が拡大表示されたパネルを示した》
「このパネルの通り、当日のホテルの領収書には、支出の明細は書かれていません。政治資金規正法11条では明細を求めていますが、なぜ明細がないのでしょうか。宿泊代というただし書きを書かずに総額だけを記載して作らせたものではありませんか」
《一連の問題では、舛添氏の庁外視察先が美術館に偏っていることが問題視されており、大島氏はその問題についても舛添氏に問いただす》
大島氏「年間55回の視察のうち美術館は39回もあるのに保育園や介護施設などは1カ所もない実態に批判の声があがっています。明らかに特定分野、自分の趣味や関心に偏重した視察と言わざるを得ません。例えば、知事は美術館視察の理由にオリンピックの文化プログラムをあげていますが、美術館は39回視察しながら、他の音楽、舞踊分野などの視察は一度もありません。このような視察先の選定は知事の個人的な趣味や関心が反映されているのではありませんか。美術館視察では五輪に向けた対応を要請、懇談すると説明していましたが、私たちの調査では要請や懇談がなかった視察が確認できただけで8回ありました。3回視察した美術館では3回とも協力要請はなかったと話しています。このように到底、五輪のためというより鑑賞が主目的の視察もあったのではありませんか。公務性が疑問視される視察も都生活文化局が受け入れを要請し、事前の準備や当日の態勢など職員が複数動員され、公用車が使用されます。知事は趣味や関心のために職員が動員されてきたことを当然だと考えるのでしょうか」
大島氏「しかも知事は『公務と公務の間にかなり押し込んでもらった』と話していましたが、知事の日程と公用車記録を突き合わせると午前中は美術館視察だけだった日が5回、午後5時前に美術館に行き、そのまま帰宅する日が11回、さらに1時間半で2件をハシゴしている日もあります。全てが忙しい公務の間に視察したとはいえないのではありませんか」
大島氏「公用車の問題について伺います。代表質問で世田谷区の自宅や神奈川県湯河原町の別荘への移動の際、『公用車に家族を乗せたことはない』旨の答弁をされました。就任以来、家族を公用車に乗せたことは一度もないのか明確な答弁を求めます」
《舛添氏が登壇する》
舛添氏「まず政治資金収支報告書の問題についてお答えします。旅行先といえども私にとって政治的に極めて重要な意味を持つものだったので、その意味で『会議』と記載させていただきました。しかしながら厳しいご指摘、都民からのご批判を受け、また弁護士による調査報告で私が安易に(旅行)全体の経費として記載したことは良識から外れていたというほかなく不適切だったと認識しております」
《そう話し、ここで舛添氏は軽く頭を下げた》
舛添氏「当初は事務所関係者による調査をしましたが、身内の調査ということで批判されたので、弁護士に依頼することになりました。その結果、面談は行われたとの事実関係が認定されたものだと受け止めております。先日の報告会見で弁護士からも調査は十分尽くされたと説明されたところであります」
舛添氏「その際の領収書を確認していただいていますが、この領収書にはただし書きを記載する欄がそもそもございません。明細について私には当時の記憶がございませんので、お答えは差し控えさせていただきますが、調査報告では是正が必要と指摘されたので、今後はこのようなことのないよう注意して参ります」
舛添氏「美術館視察についてはご指摘の通り、五輪での文化プログラムへ向けて集中的に行ってきましたが、他の施設に比べてバランスを欠いていたことは改善させていただきたいと思います。島嶼(とうしょ)部など地域性を考えながら選定したいと思います。鑑賞が主な目的ではないかとの指摘でしたが、私自身が発想を豊かにしていくことも重要なことではないかと認識しております。バランスを欠いたことで職員にも迷惑をおかけしました。効率的な視察を行えるよう工夫してきたところですが、今般の批判や調査報告を踏まえてバランスを配慮するとともに地域性に配慮して日程を組み立てたいと思います」
舛添氏「公用車への家族の同乗についてですが、これまで園遊会や、在京大使との音楽会などで家族を乗せたことがあります。これらは都知事として招待されたものであり、同時に家族も招待されたものだと認識しております」
《舛添氏は淡々とした口調で答弁を続けている》