オバマ広島演説再読 歴史のくびき解いた日米同盟…「アジア回帰」が抑止する中国の覇権
オバマ米大統領が訪問した広島の被爆地、平和記念公園では、一夜明けると多くの参拝者が原爆慰霊碑に手を合わせていた。教師に引率された小学生たちは、「原爆の子の像」に自分たちが折った千羽鶴を手向けていく。子供たちの追悼する姿を見るにつけ、そうした精神主義で平和は守れない現実の重さを思う。
オバマ氏の広島訪問でさえ、いくら名演説しようとも、核軍縮や核不拡散への効果はほとんどない。広島訪問の意義を問わば、やはり大統領が被爆地に足を運び、黙祷(もくとう)し、献花することで、勝者と敗者に残る感情のくびきを解くことにあったと思うのだ。
広島、長崎に投下された核兵器の威力のすさまじさから、米国の核研究者らは深い自責の念にかられた。原爆投下からわずか数カ月後に、米軍の主たる目的が「戦争の勝利」にあるのではなく、「戦争の抑止」にあると主張を始めている。
とりわけ、核が米国の独占物でなくなれば、なおのこと戦争の抑止戦略が重要になってくる。
「アメリカが先制攻撃を行い、ソ連の核による報復から逃げ切ることがもはや不可能であるなら、核兵器を無制限に用いる戦争は、どちらにとっても自殺行為であろうと結論づけた」(クレピネビッチ、ワッツ『ザ・ラスト・ウォーリアー』)
オバマ氏の広島演説は、確かに「核なき世界」を目指す崇高なものだった。核不拡散への努力は、歴代の米大統領も70年余にわたり政策的に積み重ねてきた。彼は追悼と理想はうたい上げたが、どう核不拡散に立ち向かうか、という戦略は語らなかった。
直後の米紙ウォールストリート・ジャーナルは、オバマ氏の対外関与について、「オバマ政権のイラン、ロシア、シリア、イラク、中国、北朝鮮に対する政策のために、重要な同盟国はむしろ、米国の決意を疑うようになった」と酷評している。
オバマ政権の対外政策を振り返れば、指摘の通りなのである。ただ、目の前の対中抑止という意味では、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)前の5月23日、旧敵であるベトナムと和解し、武器禁輸措置を解除した点を評価したい。
この決定は、オバマ政権が中国指導部に対して国際法無視の力の行使には、必ずそのしっぺ返しがあることを明確にした。
すでにフィリピンとは、5つの基地を米軍が使用できる協定を結んでいる。南シナ海で覇権を求める中国の拡大阻止と、偶発的な衝突の抑止である。
ベトナムは米越戦争後に、中国から領有していたパラセル諸島の一部を奪われ、2014年にも排他的経済水域に中国が石油探査リグを設置したことから、両軍がにらみ合った。
米国の対ベトナム武器禁輸解除により、オバマ政権は実体のなかった「アジア回帰」に魂を入れた。ベトナムは米製武器の購入や環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への加盟を通じて、中国の脅威が米越の政治体制を超えて、関係の発展を促したといえる。
かつて、中国の最高実力者のトウ小平は覇権主義に反対し、仮にもその中国が覇権を求めるならば、日本は反対すればよいと述べたことがあるという。日米同盟にとっては、それが今なのである。
そう!中国の覇権に反対!大反対!![]()
