富士重工業から「SUBARU」へ 社名変更は企業価値を高めるか

富士重工業から「SUBARU」へ 社名変更は企業価値を高めるか

富士重工業<7270>は、12日の臨時取締役会において、2017年4月1日付(予定)で、社名を「株式会社SUBARU」に変更することを決議した。6月28日開催予定の第85期定時株主総会で、定款変更の承認を条件に実施する。

同社の自動車事業は世界90カ国以上で展開しており、2017年3月期は初の年間販売台数100万台超えが見込まれるという。創業100周年でもあり、このタイミングで社名を変えてブランド名と統一させる目的について「スバルブランドを磨く取り組みをさらに加速させ、スバルを自動車と航空宇宙事業における魅力あるグローバルブランドとして成長させることにある」としている。

■パナソニックの社名変更コストは400億円

株式市場では、上場企業の社名変更は財務基盤が強固でないとできないとの見方から材料視される場面が珍しくない。

企業が社名を変える背景としては、イメージの刷新や製品名、ブランド名との統一のほか、合併、事業の多角化など様々である。文字通り「会社の看板」ともいえる社名を変えるのは、業種によっては多大なコストがかかることもあって大冒険でもある。

たとえば、2008年に松下電器産業から社名変更したパナソニック<6752>は、全国にある販売店の看板の取り替えだけでも約200億円、総額では推定400億円に達した。同社としては、「松下」「ナショナル」「パナソニック」の3つのブランドを一本化するメリットの方が大きく、数年でペイできると判断して変更に踏み切った。

もちろん、社名が変わったからといって、直ちに企業業績が飛躍的に向上するわけではない。しかし、市場参加者は社名変更そのものに反応するのではなく、上場企業の将来展望に期待を抱き反応する。社名変更は企業のメッセージそのものであり、経営理念・経営戦略の象徴と考えられるためだ。

■新たな企業価値創造のメッセージ

市場参加者は変化に敏感である。とりわけ、業績が好調な優良企業が社名を変更するとなればなおさら期待が高まる。優良企業は、社名変更の背景にある業容の拡大、製品名やブランド名の統一などの意義を明確に示すことで、投資初心者にも分かりやすいポジティブなイメージを与える。

特に1980年代に広がったCI(コーポレート・アイデンティティ)戦略や、90年代のブランディングブーム、さらにはグローバル化に向けた経営戦略の見直し等の一環として、社名変更は新たな企業価値を創造するメッセージと受け止められた。社名を変えることで上場企業がどのように変わろうとしているか、将来どの事業分野に重点を置くのか、海外戦略はどうか、などのプラス材料を連想して先高期待を高めることとなった。

■上場廃止や経営破綻となったケースも

ところが、2000年前後のITバブルで多くの新興企業が上場した辺りから、社名変更は必ずしも新たな企業価値をもたらすとは言い切れなくなっている。業績の振るわない企業が社名変更を機に新規事業、研究開発、財務体質の強化などを理由にして、公募増資や第三者割当増資、CB(転換社債型新株予約権付社債)の発行を行ったことが、結果的に「株式の希薄化」を招いて社名変更前よりも大幅に下落するケースが目につくようになった。上場廃止や経営破綻に至った企業さえある。

たとえば、ワイ・アリーバはゼクーに社名変更したあと準自己破産となったほか、プライムシステムはサンライズテクノロジーに変更したあとも業績が振るわずに上場廃止、リキッド・オーディオ・ジャパンはサイバー・ミュージックエンタテインメント、ニューディールと2回社名変更したあと上場廃止している。

今回、富士重工業のケースでは、そうした懸念を払拭するためか、社名変更とあわせて全数消却を前提とした上限1500万株(480億円)の「自社株買い」も発表している。上場企業の社名変更が発表された際には、その意図がどこにあるのか、企業価値向上に取り組む姿勢を明確に示しているかを見定める必要がある。

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タバスコ、サランラップ…なぜ固有の商品名が一般的総称に?なぜ富士重はスバルに社名変更?

自動車メーカーの富士重工業は、2017年4月1日より社名を自社ブランド名である「SUBARU(スバル)」に変更することを発表。社名変更の狙いは「知名度の高いスバルブランドを社名にすることで、自動車事業により力を入れていく姿勢を鮮明」にするためだという。

 こうした動きからもわかるとおり、商品名とマーケティングには大きな関連がある。身の回りの商品やサービスには、以下のようにある企業の商品名がそのまま一般名称として使用されていることがよくある。

「セロテープ」(ニチバン)…セロハンテープ
「タバスコ」(マキルヘニー社)…ペッパーソース
「サランラップ」(旭化成)…食品用ラップフィルム
「ウォシュレット」(TOTO)…温水洗浄便座
「テトラポッド」(不動テトラ)…消波ブロック
「ドライアイス」(ドライアイス社)…固体二酸化炭素

ざっと例を挙げただけでもかなりの数に上り、なかには「そうだったのか!」と驚くものもあるだろう。なぜ一企業のブランドの名称が、よく似た商品群を総称する代名詞となり得るのだろうか。立教大学経営学部教授の有馬賢治氏に解説してもらった。

●類似品がオリジナルに勝つのは難しい

「これらの総称化したブランド名の特徴は、最初に市場で消費者に支持されたものが多いということです。従来の市場になかったまったく新しい商品を開発して、最初に世間に浸透させることで、結果として総称のような扱いになっていったのです」(有馬氏、以下同)

 なかには、「味の素」「ヤクルト」「カルピス」など「SUBARU」と同様に登録した商標をそのまま社名に用いるケースも多い。では代名詞となることで、その発売元の企業にはどのようなメリットがあるのだろうか。

「売り手である企業側が、同種商品のブランドや機能にこだわりを持っていたとしても、買い手となる消費者には類似品の機能の差はそれほど興味がもたれないのが一般的でしょう。そのため、似たような商品がたくさん並んでいたとしても、自分の聞いたことのあるブランド名をつい選んでしまうというわけです」

 名前が商標登録されてしまえば、他社は同じ名前で売り出すことができず、商品の総称として市民権を得た時点で広告的には圧倒的有利に立つ。その後、いくら類似品で機能に優れている商品が発売されようと、なかなかオリジナルに勝つのは難しい。

●増加する「二匹目のどじょう狙い」

 だが、最近はそういった商品がめったに登場しないのも事実。アイディアが出尽くしてしまったわけではなく、違う理由があると有馬氏は語る。

「新たな市場を開拓するためには、企業は多くのエネルギーを必要とします。しかし、今はどのメーカーも新しいことにチャレンジするほどの余裕がないのが現状でしょう。売れるかどうかわからない新しいものをつくって一か八かの賭けに出るよりも、従来あるものをアレンジして利便性を上げた類似商品を開発しよう、という考えになりがちです。そのため最近では、ブランド名が総称となりうるようなケースが少なくなっているのではないでしょうか」

 アメリカ発の「ルンバ」(アイロボット・コーポレーション)が定着した例はあるものの、やはり高度経済成長期に生まれた数々の便利商品群に比べると、やはり市場を独占するような商品が現れることは少ない。そして、これは物的な商品に限ったことではない。

「書籍や映画、ドラマ、ゲーム、音楽などのエンタメの分野でも同じような状況です。企画を通しやすくなるから仕方がないのかもしれませんが、大ヒットした作品が生まれれば、『二匹目のどじょう』を狙って同じようなテーマや設定の作品が増殖します。このように、商品・サービス双方とも不景気が続くと失敗しないように無難な企画しか出さない開発担当者が増える傾向があるといえるでしょう。しかし、消費者の生活スタイルを変える革新的な商品を開発する姿勢が企業を成長させる原動力になることも忘れてはなりません」

 終戦直後の何もないところから、かつての日本の企業は失敗を恐れずにいろいろなものを作ってそれをどんどん普及させてきた。日本を再び元気にするためには、各企業はモノづくりの原点に立ち返り、冒険心を持って画期的な商品を開発してほしいものである。

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