<三菱自不正>隠蔽体質再び露呈 日産の指摘で発覚
三菱自動車が実際より燃費を良く見せる不正行為は自社にとどまらず、供給先の日産自動車ブランドを含む計62万5000台に及んだ。今後の調査で台数はさらに増える可能性もある。三菱自は2000年代前半の「リコール隠し」で経営危機に直面して以降、信頼回復に取り組んだ。しかし提携先の日産に指摘されるまで不正をただせず、かつての「隠蔽(いんぺい)体質」を払拭(ふっしょく)できていないことを露呈した。
不正の手口は「走行抵抗値」と呼ばれる燃費を算出するための基礎データの改ざん。走行抵抗値とはタイヤの路面抵抗や空気抵抗などを数値化したもの。カタログに載せる燃費性能は国土交通省の審査で決まるが、その基になる走行抵抗値はメーカーの届け出数値が採用される。
国は国の施設で行う走行試験データに、メーカーから提出された走行抵抗値を掛け合わせるなどして燃費を算出。三菱自はメーカーの言い値が採用されるこの仕組みを悪用した。走行抵抗値は通常、自社の複数回の走行実験の中央値を採用するが、燃費を良く見せられるようデータを改ざん。この結果、カタログの燃費性能は実際より5~10%高まったという。
近年の軽自動車は維持費の安さのほか、燃費性能が魅力で自動車各社は激しい開発競争をしている。今回の不正の背景にも「良い燃費に見せようという意図があったのは確か」(相川哲郎社長)だ。三菱自は記者会見で「焦りでやったものではない」と弁明したが、同社の軽自動車の燃費性能は競合他社よりやや見劣りするだけに「現場の焦りがあったのでは」(他社)との指摘もある。
一方、不正発覚の端緒は、軽自動車開発などで三菱自と提携する日産だった。次期車種は日産が主導で開発することが決まっており、開発の参考にと三菱自から提供を受けた車の燃費性能を計測し、カタログ上の性能に達しないことが分かった。日産は「自主的に該当車種の販売を中断する旨を販売会社に通知し、ユーザーへのサポートの検討を始めた」とのコメントを出した。
消費者「何を信じたら」 業界全体に不信感
三菱自動車が、軽自動車の燃費試験のデータを改ざんしていた。問題の車を買ったドライバーは、カタログの性能より余計にガソリン代を負担してきたことになる。「何を信じたらいいのか分からない」。ユーザーから厳しい声が上がった。【田ノ上達也、太田敦子、内橋寿明】
軽乗用車「eKワゴン」に乗る千葉市の主婦(42)は「利益のみを追求する中で起きたのではないか。なぜ不正が行われたのか理由を知りたい」と驚いた様子を見せた。同車種では2013年6月以降の製造で不正があった。主婦は車を10年ほど前に購入。対象外だが、買い替えを検討していたところで、「何を信じたら……」と不安を口にした。
三菱自動車やグループ会社では2000年以降、母子3人死傷事故などに絡みリコール隠しが発覚し、批判を浴びた。「燃費をごまかしてばれないと思っていたのか」「もう車を作らないでほしい」。インターネット上でも不正発表後、辛辣(しんらつ)な投稿が相次いだ。
中には「震災報道に隠れることができるかもという考えが見え隠れ」と公表のタイミングを問題視する声や、「他のメーカーも実際の燃費はカタログと違う。当てにならない」など自動車業界への不信も書き込まれた。
愛知県岡崎市の同社名古屋製作所では、午後5時半ごろに仕事を終え退勤する従業員たちが「何も聞いていないのでよくわからない」などと表情をこわ張らせていた。
不正について50代の男性は「これからどうなるんだろう。うちの工場は軽自動車は作っていないけれど関係は大ありです」と頭を抱えていた。40代の男性は「帰る直前にネットニュースで知りました。詳しいことはわからないので家に帰ってチェックします」と硬い表情で話していた。
同社の20日の記者会見では、100人以上の報道陣から「隠蔽(いんぺい)体質は変わっていないのではないか」など厳しい質問が相次いだ。
相川哲郎社長ら役員3人が会見冒頭、深々と頭を下げたが、ユーザーへの対応を問われ相川社長は「どうすれば納得していただけるのか検討を始めたところ。今後ご案内したい」と述べるのがやっとだった。
前代未聞のずるい手口
自動車評論家の国沢光宏さんの話 自動車メーカーが燃費性能を競争している中で前代未聞のずるい手口だ。上層部が掲げた目標を達成できず、最後に帳尻を合わそうとして不正に手を染めたのではないか。実際の燃費との差に比べ、受けるダメージは計り知れない。不正を認識した社員が指摘できなかった企業体質も大きな問題だ。
「ユーザー離れ確実」 海外向けも調査
2000年代前半に大規模なリコール(回収・無償修理)隠しで経営危機に陥った三菱自動車。再び深刻な不正を引き起こしたことで、法令順守意識の低さが改めて浮き彫りになった。国内販売の主力、軽自動車部門で起きた不祥事だけに、販売や業績へのダメージは大きく、経営に与える影響も見通せない。
「(リコール隠し問題を起こした)00年以降、法令順守第一で取り組んできたが徹底することの難しさを感じている。無念であり、じくじたる思いだ」。20日に東京都内で記者会見した相川哲郎社長は苦渋の表情で語った。
三菱自は00、04年に発覚した大規模なリコール隠し問題が発端となり経営危機に陥った。三菱重工業や三菱商事、三菱東京UFJ銀行を中心としたグループ3社が多額の増資を引き受けて支援し、三菱商事出身の益子修氏が三菱自社長に就任。海外の不採算工場閉鎖などで再建を進めた結果、13年に累積損失を解消して経営再建に一定のめどをつけたばかりだった。14年6月には9年間社長を務めた益子氏の後任社長に生え抜きの相川氏が就任、「再建から反転攻勢に段階が変わった」(三菱自幹部)はずだった。
今回の不正があった車種は安全性能に問題がないため、リコール対象にはならない見通しだ。しかし、「再びユーザー離れが進むのは確実」(自動車大手)で、人気2車種の生産・販売を停止したうえ、今後はユーザーへの補償も必要になる。燃費試験での不正行為の結果、本来は対象にならないエコカー減税で国や地方自治体の税収を減らすことになっていた場合には、三菱自が穴埋めする考えも示しており、業績だけでなく企業イメージに与える影響も小さくない。
また、東南アジアでの販売強化を目指してきた三菱自は「海外市場向け車両についても調査する」としており、影響が国内だけにとどまらない可能性も出てきた。
自動車業界の競争環境は厳しく、三菱自は販売台数でトヨタ自動車やホンダなどに引き離されているうえ、今後の生き残りのカギを握る次世代自動車の開発などでトヨタなどに後れをとっている。16年3月期は景気悪化が続くロシアなどでの販売減を受けて最終減益となる見通しだ。
今回の不正は経営を揺るがす問題に発展する可能性もあるが、相川社長はぼうぜんとした表情で「現段階で業績への影響は見通せない」と繰り返すばかりだった。
三菱自動車が燃費試験で不正 再び不祥事に相川社長「忸怩たる思い」
三菱自動車は20日、記者会見を開き、自社製車両の燃費試験で不正行為が行われていたと発表した。国土交通省に提出した燃費試験データについて、実際よりも燃費を良く見せる数値を採用していた。また、国内法に定めのない試験方法を採用していたことも明らかになった。相川哲郎社長は「意図的な不正」だとして陳謝。2000年代初めのリコール隠し問題で批判を受けた同社だが、再び不祥事でコンプライアンス意識の不徹底ぶりを露呈したことについて「忸怩たる思い」と語った。
燃費試験データの不正が分かったのは、3月末までに自社で計15万7000台を生産した「eKワゴン」と「eKスペース」、日産自動車に46万8000台を供給した「デイズ」と「デイズルークス」の計4車種・合計62万5000台。
燃費試験は、4車種とも開発を担当した三菱自動車側が実施していたが、日産側が新製品開発にあたって、参考のために不正が行われていた車両の燃費を測定したところ、国交省への届出値とは差があったことから、三菱自動車へ確認を求めた。これを受けて、社内で調査した結果、実際よりも燃費に有利な走行抵抗値(車両が走行する際の転がり抵抗や空気抵抗)が採用されていたことがわかった。
走行抵抗値は、車両の走行を妨げようとする力であり、この値が小さくなればなるほど、それだけ少ない燃料で長い距離を走行できる。該当4車種については現在、再試験を行っているが、実際の値と不正値とは、おおむね5~10%程度乖離している見込みだという。
三菱自動車によると、この不正が行われたのは名古屋製作所(愛知県岡崎市)にある開発本部。関係者に対するヒアリングを行っているが、相川社長は「この操作は意図的なものであると考えている。数字を良く、いい燃費に見せるという意図があったのは確か」と述べ、過失ではなく「意図的な不正」だとの見方を示した。
この不正について相川社長が報告を受けたのが13日で、日産には18日に報告したという。該当4車種は、20日午後に生産・販売を停止。日産側も同様の措置を取った。
該当車種のユーザーへの対応策については検討中。また、相川社長は、「販売店の皆さんへの対応も検討をはじめたところ。急いで解決すべきだと考えており、早急に結論を出したい」とした。
一方、社内調査の過程では、試験方法について、国内法規の定めとは異なる方法を、多くの車両で採用していたことも明らかになった。少なくとも2002年ごろから使われているが、なぜその方法が使われたかは不明とした。該当する車種については、あらためてデータを取り直した上で国交省に報告する。
これらの問題についての徹底調査を行うため、三菱自動車では外部の有識者のみで構成する調査委員会を設置し、結果がまとまり次第、公表する。調査期間について、相川社長は「調査内容次第であり、現時点でまだ決まっていないが、3か月、できればもう少し早く報告できればと思う」と述べた。
不正が行われた背景について、経営陣からのプレッシャーがあったのではないかとの指摘に対し、中尾龍吾副社長は「技術的な裏付けのない目標値の達成を求めることはない」と否定したが、社内で設定した目標値を達成するために不正が行われたのではないかとの問いに対しては、「その可能性が高いと考えている」との考えを示した。
三菱自動車は、2000年代初めのリコール隠しで社会的に大きな非難を浴びたが、そうした隠蔽(いんぺい)体質は変わらないのではないかとの指摘に対し、相川社長は「そういう見方は重々承知している。石垣を積むように改善を図ってきたが、全社員にコンプライアンス意識を浸透させるのは難しい。無念であり忸怩たる思い」と語った。自らの進退については、「まずは問題を解決し、再発防止に道筋をつけるのが責任。これ以上のことは考えていない」と述べるにとどめた。
三菱自動車、eKワゴンなど軽自動車において燃費試験の不正認める
三菱自動車は、三菱「eKワゴン」「eKスペース」および日産「デイズ」「デイズルークス」の4車種において、燃費を実際よりも良く見せるために不正な操作を行っていたことを4/20に発表、同社社長 相川哲郎氏が記者会見を開いた。
該当する車種は、2013年6月から生産している三菱「eKワゴン」「eKスペース」15万7千台、日産「デイズ」「デイズルークス」46万8千台の合計62万5千台におよび、該当車については生産・販売を停止する。
三菱自動車からの発表は以下の通り。
当社製軽自動車の型式認証取得において、当社が国土交通省へ提出した燃費試験データについて、燃費を実際よりも良く見せるため、不正な操作が行われていたことが判明しました。また、国内法規で定められたものと異なる試験方法がとられていたことも判明しました。お客様はじめ全てのステークホルダーの皆様に深くお詫び申し上げます。
該当車は、2013年6月から当社で生産している「eKワゴン」「eKスペース」と、日産自動車向けに供給している「デイズ」「デイズルークス」の計4車種です。これまでに当社は計15万7千台を販売し、日産自動車向けには計46万8千台を生産しています(2016年3月末現在)。
燃費試験については、該当車のいずれについても、開発を担当し認証届出責任を持つ当社が実施していました。次期車の開発にあたり、日産自動車が該当車の燃費を参考に測定したところ、届出値との乖離があり、当社が試験で設定した走行抵抗値について確認を求められました。これを受けた社内調査の結果、実際より燃費に有利な走行抵抗値を使用した不正を把握するに至ったものです。該当車にお乗り頂いているお客様に対しては、今後、誠実に対応させて頂きます。
また、該当車については、生産・販売を停止することといたしました。日産自動車でも販売を停止して頂いており、補償についても今後、協議いたします。
その他の国内市場向け車両についても、社内調査の過程で、国内法規で定められたものと異なる試験方法がとられていたことが判明しました。
また、状況の重大性を鑑み、海外市場向け車両についても調査を行います。
これら問題につき、さらに客観的で徹底的な調査を行うため、独立性のある外部有識者のみによる調査のための委員会を設置し、調査結果がまとまり次第、公表させていただく予定です。
三菱自不正「会社に裏切られた」 倉敷・従業員に不安や戸惑い
三菱自動車が燃費試験で不正行為をしていたことが明らかになった20日、水島製作所(倉敷市水島海岸通)は対象車種の生産停止に追い込まれることになった。「これからどうなるのか」―。従業員からは不安や戸惑いの声が上がり、取引のある岡山県内の部品メーカーはブランドイメージや業績悪化を懸念した。
水島製作所には従業員約3600人が勤務。この日は熊本地震で一部の部品が届かず、軽自動車の生産ラインが停止していることもあり、夕方の正門前は足早に帰宅する姿が目立った。
「何でこんなことをしたのか。残念だし、怒りを覚える」と事務部門の40代男性。40代女性は「新型車の投入計画もあって職場の雰囲気は良かっただけに残念」と漏らした。
同製作所は2015年に約30万9千台を生産。このうち、「eKワゴン」と、日産自動車向けに生産している「デイズ」など、燃費試験の不正が明るみになった4車種が6割を占める。生産部門の40代男性は「リコール隠し以降、現場で真面目に頑張ってきたのに、会社には裏切られた思いだ」と吐き捨てた。
相川哲郎社長の会見が始まった午後5時すぎ、水島製作所と取引関係がある系列部品メーカーにも不正問題の連絡が入り、混乱が広がった。
倉敷市内の部品会社幹部は「リコール隠しで大打撃を受けた教訓が全く生かされていない。三菱車のイメージダウンは避けられず、販売減が拡大するかもしれない」。総社市内の部品メーカーの管理職は「対応を協議しているが、三菱自から詳細の連絡はなく、困惑しているとしか言いようがない」と憤った。
水島製作所の生産再開の見通しは今のところ立っておらず、協力会社12社でつくる協同組合「ウイングバレイ」(総社市)の昼田真三理事長は「取引先への影響は大きい。三菱自は襟を正し、きちんとした経営をしてもらいたい。事態を早期に収拾させ、一刻も早く生産を再開してほしい」と話した。
上場後「最安値」=三菱自株
21日の東京株式市場で、三菱自動車の株価が前日に続き急落した。終値は制限値幅の下限となる前日比150円安の583円。同社は2013年7月に株式併合しており、これを考慮すれば事実上の上場後の最安値になった。
下落率は20%で、全上場銘柄の中で最も大きかった。三菱自株は大量の売り注文を残したまま、21日の取引を終えた。
