ユネスコが登録決定「和紙」無形文化遺産へ紙技つなぐ励みに実用性と美

「和紙」無形文化遺産に 和食に続き、ユネスコが登録決定

文化庁に27日入った連絡によると、国連教育科学文化機関(ユネスコ)は、フランス・パリのユネスコ本部で政府間委員会を開き、日本政府が推薦した「和紙 日本の手漉(てすき)和紙技術」を無形文化遺産に登録することを決めた。昨年の「和食」に続き2年連続の登録決定で、文化庁では「日本の文化や伝統工芸の水準の高さを国際社会にアピールする原動力にしたい」と期待している。

 今回登録された「和紙」は、国の重要無形文化財に指定されている「石州半紙(せきしゅうばんし)」(島根県浜田市)と「本美濃紙(ほんみのし)」(岐阜県美濃市)、「細川紙(ほそかわし)」(埼玉県小川町、東秩父村)の3紙の技術で構成。職人らでつくる保存団体が、原料にクワ科の植物である「楮(こうぞ)」の樹皮のみを用いる伝統的な製法を守り伝えている。

 このうち、石州半紙は平成21年に登録済みだが、政府は25年、本美濃紙と細川紙を加えた「和紙」の技術として登録し直すよう拡張提案。ユネスコの補助機関が事前審査を行い、無形文化遺産に登録するよう今年10月に勧告していた。

 文化庁によると、政府間委員会では、丈夫で柔らかい和紙の特質だけでなく、(1)後継者の育成(2)学校での体験事業(3)楮の栽培促進-など地域で保存活動が進められていることも、高く評価されたとみられる。

 無形文化遺産は「世界遺産」や「記憶遺産」と並ぶユネスコの遺産事業の一つで、11月25日現在、世界で281件が登録。日本では「能楽」「歌舞伎」「京都祇園祭の山鉾(ぼこ)行事」など22件に上る。

「和紙」無形文化遺産へ 紙技つなぐ励みに 実用性と美、外国人も支持

 日本で受け継がれてきた文化が、またひとつ世界共通の財産になった。「和紙 日本の手漉(てすき)和紙技術」がユネスコの無形文化遺産に登録される見通しとなり、関係者からは「日本文化の新たな面を伝え、技術継承に関心が高まるきっかけになれば」と期待の声が上がった。

 重要無形文化財としても知られる「石州半紙(せきしゅうばんし)」「本美濃紙(ほんみのし)」「細川紙(ほそかわし)」は、いずれも原料として植物の楮(こうぞ)を使用。原料や道具にこだわった伝統的な制作工程が受け継がれてきた。

 岐阜県の本美濃紙は、楮から黒皮を除き、白皮を清流に数日間浸して自然漂白。さらに水に浸して柔らかくした後、鉄釜で煮てあく抜きし、流水で洗った楮を石盤の上で木づちでたたく。その後、楮を水やトロロアオイという植物の粘液と合わせ、紙漉き作業を行う。

 本美濃紙では、楮の白皮約15キログラムのうち原料として使えるのはわずか約6・6キログラム。ここからできる和紙は約330枚と、非常に手間がかけられている。

 東京・浅草橋に店を構えて100年あまりという和紙、和紙工芸品問屋「田中和紙」の田中俊孝社長(59)は手漉き和紙の魅力を「地域の水や気候、木々の性質がそのまま和紙にあらわれる。日本の風土の違いを実感できるという洋紙にはない面白みがある」と話す。

 和紙を制作している産地も歓喜に包まれた。「『庶民の紙』が認められ、大きな励みになる」と声を弾ませたのは細川紙技術者協会の鷹野禎三会長(79)。埼玉伝統工芸会館で細川紙の魅力を観光客に伝える谷野裕子工房長(56)も「これを機に、もう一度和紙を使ってもらえる機会が増えたら」と喜んだ。

 期待の背景には、需要の減少や後継者不足など厳しい現実がある。

 島根県の石州半紙は5年前、一足先に無形文化遺産になったが、現在の製造所は4軒だけ。石州半紙技術者会の川平正男会長(73)は「登録後を振り返っても、紙の消費量が増えたとか、脚光を浴びたとかいうわけではない。人口減で市場は小さくなっており、将来が心配だ」と話す。

 細川紙は現在でも和本や版画の用紙、切り絵などに活用され、埼玉県小川町と東秩父村に計7カ所の工房があるが、こうした問題と無縁ではない。鷹野会長は「和紙文化の継承に向け、困難を乗り越える努力を続けたい」と語った。

 それでも、手間のかかった手漉き和紙は、外国人客からの支持も根強い。

 浅草橋周辺に和紙を買い求めに訪れたドイツ人のヘレネ・コンラーディさん(52)は「実用性と美しさを兼ね備えた伝統技術は大切にすべきだ。私たち外国人も和紙の良さを発信していきたい」と話した。

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