<御嶽山>至難の再噴火予測「最初以上に難しい」
長野、岐阜県境にある御嶽山(3067メートル)の噴火で、捜索を阻む火山性微動について、気象庁は地下のマグマや火山ガスの移動、地下水の沸騰など、新たな動きを警戒している。微動は噴煙によっても起きるが、御嶽山の噴煙の勢いに変化はない。29日には、山麓(さんろく)で28日の2倍に当たる1000トンの火山ガス(二酸化硫黄)の放出を観測した。
揺れの大きな火山性地震の回数は減りつつある。噴火が始まった27日は421回に上ったが、28日以降は大幅に減った。ただし、噴煙の通り道ができる噴火初期は地震が多発しやすく、地震の減少は火山活動の収束を必ずしも意味しない。山岡耕春(こうしゅん)・名古屋大教授(地震・火山学)は「29日以降、微動に変化が生じている。火山活動は続いており、細心の注意が必要」と話す。
今後の見通しが不透明な背景に、御嶽山の噴火例が極めて少ないことがある。水蒸気爆発を起こした1979年まで「死火山」とみられ、その後も2回の小噴火だけ。桜島(鹿児島県)を観測する京都大火山活動研究センター長の井口正人教授(火山物理学)は「一度噴火が起きた火山で次の噴火を予測するのは、最初の時以上に難しい」と話す。地下構造が変わって微動の原因を特定しづらくなるうえ、桜島のように火山性地震がほとんどないまま爆発するケースもあるからだ。
産業技術総合研究所の山元孝広・総括研究主幹は、「今後、マグマが上昇して噴火する前触れ現象である可能性もある」と指摘する。気象庁はマグマ上昇によって放出量が高まるとされる二酸化硫黄の濃度を測定するチームを現地に派遣。東京大地震研究所は、火山灰の成分の変化を分析する予定だが、27日のような水蒸気爆発の予知は難しい。災害医療に詳しい石峯康浩・国立保健医療科学院上席主任研究官は「2次被害の恐れがあるうちは、捜索活動も慎重にならざるを得ない」と話す。