<日産>幹部流出…半年で3人 ゴーン長期政権の不安
日産自動車の幹部流出が相次いでいる。カルロス・ゴーン社長(60)の右腕だったアンディ・パーマー氏(51)が今月辞任するなど、この半年で3人が他社に移った。欧米では幹部の引き抜きが当たり前とはいえ、ゴーン氏の長期政権の弊害を指摘する声もある。【山口知】
パーマー氏は英国出身。商用車部門で実績を積み、ゴーン後継の有力候補と目されていた。日産を去って母国の高級車メーカー、アストン・マーチンの最高経営責任者(CEO)に転身するのは、「トップとして経営に挑戦したい思いが強かった」(日産役員)ためだ。ゴーン氏が日産トップに就いて14年、親会社ルノーのトップも併任して9年がたった。ゴーン氏は、2016年度までに世界シェア8%などの目標達成に執念を燃やしており、あと3年は君臨するとの見方が多い。
ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹アナリストは「優秀な人ほどトップに立ちたい思いは強い。ゴーン政権が長期化するほど人材流出につながる」と指摘する。今年3月には、ルノー・日産連合の広報責任者を務めたサイモン・スプロール氏(45)が米テスラ・モーターズ副社長に転身。7月には高級車部門「インフィニティ」を統括していたヨハン・ダ・ネイシン氏(54)も、米ゼネラル・モーターズ(GM)の高級車部門「キャデラック」のトップに移った。
ゴーン氏は報酬でも突出している。昨年度は9億9500万円で、取締役8人の総額の6割を占めた。執行役員だったパーマー氏は不明だが、ほぼ同格とされていた元外国人取締役の1億6500万円と大差はなさそう。日本企業は欧米に比べれば役員報酬が安く、パーマー氏が母国企業のトップに就けば、報酬アップは確実だ。
日産は電気自動車などの販売が伸び悩み、“独り負け”の状態だが、ハイブリッド軽視などゴーン氏の戦略の帰結との見方も根強い。昨年には志賀俊之・前最高執行責任者(COO)が副会長に退き、パーマー氏ら3人が主要部門の統括に就く人事に踏み切ったが、ゴーン氏への権力集中がさらに進んだとの見方もある。
現在の日産は「欧米よりも幹部の入れ替わりが多い印象」(アナリスト)とされる。幹部が頻繁に代われば、開発や設備投資などの一貫性を損ねかねない。トップの誤りを指摘できるような有力幹部を内部登用や外部招へいでそろえ、競わせることで経営戦略を高められるか。ゴーン氏の役員操縦術も問われる。