時代遅れの最高速度:整備新幹線が時速260kmしか出せない事情

整備新幹線が時速260kmしか出せない事情

東京方面から東北新幹線E5系「はやぶさ」に乗ると、宇都宮を過ぎたあたりから速度をぐんぐん増し、仏TGVと並ぶ営業速度世界最速タイの時速320キロメートルで走る。が、盛岡を過ぎた途端、最高速度は時速260キロメートルに減速する。

 1982年に開業した大宮―盛岡間に比べ、盛岡―新青森間の開業は2002~10年と、時期は最近だ。30年以上前に建設された区間で時速320キロ運転が行われているのに、最新の技術で建設されたはずの盛岡―新青森間で時速260キロ運転にとどまっているのはなぜか。

 答えは、盛岡以北が全国新幹線鉄道整備法(全幹法)に基づく「整備新幹線」だからだ。北海道、北陸、九州の新幹線も、同様である。全幹法で規定される整備計画には、営業最高速度が時速260キロメートルと記され、これが今も適用されている。すなわち、JR東日本の独自判断で速度を引き上げることはできないのだ。

■ 時代遅れの最高速度

 整備計画が定められたのは1973年。当時の新幹線の最高速度は時速210キロメートルに過ぎなかった。将来の速度向上を見越して、時速260キロメートルと定めたに違いないが、現在では時代遅れだろう。ならば実態に合わせ、整備新幹線の最高速度を時速320キロメートル程度まで引き上げることは、はたして可能なのか。

 「整備新幹線の建築構造物は時速320キロ運転でも耐えられる」と、建設に係わった関係者は証言する。

 整備新幹線の構造物は、鉄道・運輸機構が建設して、JRに貸し付けている。同機構の事業活動について評価を行う事業評価委員会は、現在建設中の北海道新幹線(新青森―新函館間)に対し、2011年度に「既存の新幹線においても時速300キロメートル級の運行が実施されていることや、世界の高速鉄道の動向を踏まえると、将来的に速度向上を図ることを検討する必要がある」と指摘している。やはり、有識者の間でも、速度向上については議論されていたのだ。


 しかし、この点について、機構側は「指摘は重く受けてとめているが、時速260キロメートルで国から認可を受けたので、われわれの一存で時速300キロメートルに引き上げるわけにはいかない」と回答した。

 一度決めた最高速度の引き上げには、さまざまな問題が伴う。速度向上によって、周囲への騒音が拡大する。そのため、沿線の環境調査をやり直す必要が出てくる。JRへの貸し付け条件も見直さねばならない。

 「構造物は時速320キロ運転に耐えられる」との前述の発言にも、「本当に可能か、安全工学に基づき、区間ごとに慎重な検証が必要だ」と、国土交通省の担当者は疑問を呈する。ただ、すでに開業した区間はともかく、これから建設が着工する区間については、問題は少ないのではないだろうか。

■ 時速360キロなら4時間以内

 2035年に札幌まで延伸する予定の北海道新幹線は時速260キロメートル運転を前提としている。その場合、東京―札幌間の所要時間は5時間01分と試算されている。これは、東海道山陽新幹線の東京―博多間の所要時間とほぼ同じで、航空機と比べると圧倒的に不利だ。

 だが、数年前に北海道経済連合会は、時速360キロ運転で3時間57分としている。将来の技術の発達を考えれば、不可能な速度ではない。

 現在、自民党内では、整備新幹線の開業前倒しの議論が急浮上している。「開業前倒しにより経済効果が高まる」との理由だが、一時的にとどまる前倒し効果に比べて、速度向上による経済効果は将来にわたって続く。速度向上についても議論する価値はあるはずだ。

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