体調不良2500人…でもマラチオン検出ゼロ 「健康被害」は別の要因?
食品大手マルハニチロホールディングスの子会社「アクリフーズ」群馬工場(群馬県大泉町)で製造した冷凍食品から農薬「マラチオン」が検出された問題で、各地で報告されている「健康被害」とマラチオンとの因果関係に、微妙な齟齬(そご)が生じている。回収対象商品を食べて体調不良を訴えた人は全国で約2500人だが、自治体の検査が約4分の1終わったのに農薬検出の例はない。回収対象(640万個)もすでに半数以上を回収したが、異臭が確認されたのはわずか5個だ。「健康被害」が別の要因で起こった可能性も出ている。
ノロの可能性指摘
厚生労働省によると、健康被害の疑いがあるとして各自治体が公表した事例は12日現在で2062件、2490人にのぼる。
いずれも、嘔吐(おうと)や腹痛などの症状を訴えているが、自治体が食べ残しなどを検査し結果が判明した560個に農薬が検出されたものはない。
ある自治体の担当者は「冬場でもあり、ノロウイルスなど別の原因で体調を崩した人も一定数いるのでは」と推測する。
「異臭」はわずか
マラチオンの混入が確認されたり、混入が疑われたりする商品に共通するのは石油のような刺激臭だ。
こうした「異臭商品」は昨年12月29日の問題発覚時点で20個確認された。うち9個から国の残留農薬基準値の150万倍(衣は260万倍)~200倍(同600倍)のマラチオンが検出された。
同社は、残る11個のうち群馬県警に任意提出した1個を除く10個について、検査基準が甘く、微量の農薬が付着している可能性が残るとして再検査している。
問題発覚後、同工場で製造された商品の自主回収も行っているが、これまでに対象の640万個のうち約375万個(58・7%)を回収したものの、異臭を確認したのは5個のみ。任意提出と再検査分の11個を含め、混入の疑いが残るのは16個にすぎない。
異臭商品は、いずれも消費者が臭いに気づいてそもそも食べないか、口に入れた直後にはき出しており、健康被害は出ていない。
内藤裕史・筑波大名誉教授(中毒学)は「体調を崩した人が食べた冷凍商品に農薬が含まれていたとすれば、(臭いなどの違和感を覚えていないことから)異臭商品より濃度は低いはず。今回最も低濃度の農薬が検出された商品でも、かなりの量を一度に食べてない限り、身体に影響は出ないレベル。健康被害とマラチオンとの因果関係は薄いのでは」と指摘する。
他の毒物は否定的
では、体調不良の訴えが相次いでいる理由はほかにあるのか。
考えられるのはマラチオン以外に、類似の農薬や青酸カリなどの無臭の毒物が商品に混入された可能性だが、捜査関係者は「もしそうなら、そちらの方が先に検出され、すでに問題になっているはず」と、否定的な見解を示す。
これまでに確認された異臭商品の製造時期は、いずれも昨年10~11月。群馬県警は、この期間の限られた商品に対して混入されたとの見方を強めている。
